論文概要
この論文は、Leonhard Eulerが数学の歴史における重要な問題に取り組んだ「Dissrtatio altera」(第二論文)です。円周率と関連する級数の合計について、全く異なる方法から導出するという画期的な研究です。
研究の背景
オイラーは数年前に、自然数のべき乗から生まれる逆数級数の合計を円の求積法を利用して研究していました。
以下のような形式の級数を扱っていました:
- 偶数nの場合: 1 + 1/4ⁿ + 1/5ⁿ + …
- 奇数nの場合: 1 + 1/3ⁿ – 1/5ⁿ + 1/7ⁿ – …
これらの級数の合計は常に円周率のn乗に関連する式で表現されることを発見し、数学者たちから高く評価されました。
この論文の主な貢献
1. 無限方程式の根の証明
オイラーは、彼の方法が正当であることを証明するため、無限方程式がすべての根を正しく含んでいることを示しました。これまでは虚数根の可能性について疑問がありましたが、本論文でこれを解決しています。
2. 新しい積分解析的方法
二つの重要な定理に基づいた、純粋に解析計算のみを用いた新しい方法を提示しました:
$\int \frac{x^{p-1} – x^{1-p}}{1-x^2} dx$
この方法は積分規則だけを用いており、より直接的で透明性の高いアプローチです。
3. 微分による一般化
定数sを変数として扱い、級数を微分することで、さらに多くの新しい級数の合計を導出しました。
得られた級数の例
論文では多くの具体例が示されています:
ライプニッツの級数: $\frac{\pi}{4} = 1 – \frac{1}{3} + \frac{1}{5} – \frac{1}{7} + \cdots$
グレゴリの級数を含む他の円周率級数: $\frac{\pi}{2\sqrt{2}} = 1 – \frac{1}{3} + \frac{1}{5} – \frac{1}{7} + \cdots$
q = 3, p = 1の場合: $\sum_{k=0}^{\infty} \frac{1}{(2k+1)^3} = \frac{\pi^3}{32}$
q = 6, p = 1の場合: $\sum_{k=0}^{\infty} \frac{1}{(2k+1)^6} = \frac{\pi^6}{960}$
そして多くのパラメータ化された級数族。
数学的意義
この研究は、以下の点で数学史上重要です:
- 厳密性の向上 – 虚数根の問題に直接対処し、級数の正当性を確立しました
- 方法の多様化 – 同じ結果を異なるアプローチから導出することで、数学的真実の深い理解を示しました
- 新しい道具の開発 – 微分を用いた系統的な方法により、無限に多くの新しい級数を生成できることを示しました
- 解析学の拡張 – 無限級数の和の計算における新しい限界を広げました
学問的反応
この論文は、オイラー自身が認める通り、有名な数学者たちからの建設的な批判を受けました。特にDaniel Bernoulliとその友人たちからの指摘が、この完全な論文の執筆を促したとのことです。このような学問の相互作用が、より堅牢で説得力のある成果をもたらした例となっています。
現代での意義
現代の数学においても、この級数論の研究は:
- ゼータ関数の特殊値の理論
- フーリエ解析
- 解析的整数論
などの基礎となっており、その影響は今日まで続いています。
原文: Euler, L. “De summis serierum reciprocarum ex potestatis numerorum naturalium ortarum. Dissrtatio altera” (1755)









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