「平方数の和」で表せる数を探る ――オイラーが見抜いた数の構造
数を見ていると、次のような形で表せるものがあります。
$$a^2 + b^2$$
たとえば $5 = 1^2 + 2^2$、$13 = 2^2 + 3^2$ のように、「2つの平方数の和」として書ける数です。
では、どんな数がこの形で表せるのか。逆に、どうしても表せない数はあるのか。
この素朴でありながら奥深い問いに、正面から取り組んだのが、18世紀の数学者 レオンハルト・オイラー です。
1758年に発表された論文『De numeris, qui sunt aggregata duorum quadratorum』(「二つの平方数の和として表される数について」)は、数論の古典として知られています。
問題は「表せるか」だけではない
オイラーが考えたのは、単に
ある数が $a^2 + b^2$ と書けるかどうか
だけではありません。
- その数が 素数 のときはどうなるのか
- 積や倍数になったとき、性質はどう変わるのか
- 一度この形で表せた数同士を掛け合わせると、何が起こるのか
といった、数の構造そのものです。
積をとっても、平方数の和は保たれる
この論文の核心の一つは、次の事実です。
もし
$$p = a^2 + b^2, \quad q = c^2 + d^2$$
と表せるなら、その積 $pq$ もまた
$$pq = (ac – bd)^2 + (ad + bc)^2$$
という形で、再び2つの平方数の和として表せる。
これは単なる計算結果ではありません。「平方数の和」という性質が、積に対して 安定している ことを示しています。
素数との深い関係
さらにオイラーは、平方数の和と 素数の形 との間に、はっきりとした関係があることを明らかにします。
たとえば、
- $4n+1$ の形をした素数は $a^2 + b^2$ と表せる
- 一方で、$4n+3$ の形の素数は 原則としてこの形では表せない
という性質が、論文全体を通して体系的に扱われています。
ここでは、「なぜそうなるのか」を、個別の例ではなく、一般的な議論によって説明しようとする姿勢が貫かれています。
計算から理論へ
この論文の特徴は、数表を並べて終わらない点にあります。
オイラーは、
- 多くの具体例を確認し
- そこから共通する構造を抜き出し
- 一般に成り立つ命題として整理する
という、現代数学にも通じる研究スタイルを示しています。
「平方数の和」という一見素朴なテーマが、数の分解、素数の分類、積の構造へと自然につながっていく様子は、読んでいて非常に印象的です。
この論文が持つ意味
『二つの平方数の和として表される数について』は、
- 数の性質を「形」で捉える視点
- フェルマー以来の数論を整理し直す試み
- 後の代数的整数論につながる発想
を含んだ、重要な一歩です。
数式は多く登場しますが、その背後にあるのは、
「数には、偶然ではない構造がある」
というオイラーの一貫した確信です。
数学史を通して見ると、この論文は 計算の積み重ねから、理論としての数論が立ち上がっていく瞬間 をはっきりと示していると言えるでしょう。









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