「平方数の和」で表せる数を探る ――オイラーが見抜いた数の構造(E228)

「平方数の和」で表せる数を探る ――オイラーが見抜いた数の構造

数を見ていると、次のような形で表せるものがあります。

$$a^2 + b^2$$

たとえば $5 = 1^2 + 2^2$、$13 = 2^2 + 3^2$ のように、「2つの平方数の和」として書ける数です。

では、どんな数がこの形で表せるのか。逆に、どうしても表せない数はあるのか。

この素朴でありながら奥深い問いに、正面から取り組んだのが、18世紀の数学者 レオンハルト・オイラー です。

1758年に発表された論文『De numeris, qui sunt aggregata duorum quadratorum』(「二つの平方数の和として表される数について」)は、数論の古典として知られています。

問題は「表せるか」だけではない

オイラーが考えたのは、単に

ある数が $a^2 + b^2$ と書けるかどうか

だけではありません。

  • その数が 素数 のときはどうなるのか
  • 積や倍数になったとき、性質はどう変わるのか
  • 一度この形で表せた数同士を掛け合わせると、何が起こるのか

といった、数の構造そのものです。

積をとっても、平方数の和は保たれる

この論文の核心の一つは、次の事実です。

もし

$$p = a^2 + b^2, \quad q = c^2 + d^2$$

と表せるなら、その積 $pq$ もまた

$$pq = (ac – bd)^2 + (ad + bc)^2$$

という形で、再び2つの平方数の和として表せる。

これは単なる計算結果ではありません。「平方数の和」という性質が、積に対して 安定している ことを示しています。

素数との深い関係

さらにオイラーは、平方数の和と 素数の形 との間に、はっきりとした関係があることを明らかにします。

たとえば、

  • $4n+1$ の形をした素数は $a^2 + b^2$ と表せる
  • 一方で、$4n+3$ の形の素数は 原則としてこの形では表せない

という性質が、論文全体を通して体系的に扱われています。

ここでは、「なぜそうなるのか」を、個別の例ではなく、一般的な議論によって説明しようとする姿勢が貫かれています。

計算から理論へ

この論文の特徴は、数表を並べて終わらない点にあります。

オイラーは、

  • 多くの具体例を確認し
  • そこから共通する構造を抜き出し
  • 一般に成り立つ命題として整理する

という、現代数学にも通じる研究スタイルを示しています。

「平方数の和」という一見素朴なテーマが、数の分解、素数の分類、積の構造へと自然につながっていく様子は、読んでいて非常に印象的です。

この論文が持つ意味

『二つの平方数の和として表される数について』は、

  • 数の性質を「形」で捉える視点
  • フェルマー以来の数論を整理し直す試み
  • 後の代数的整数論につながる発想

を含んだ、重要な一歩です。

数式は多く登場しますが、その背後にあるのは、

「数には、偶然ではない構造がある」

というオイラーの一貫した確信です。

数学史を通して見ると、この論文は 計算の積み重ねから、理論としての数論が立ち上がっていく瞬間 をはっきりと示していると言えるでしょう。

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