18世紀の数学者 レオンハルト・オイラー は、生涯にわたって「数を平方数の和として分解する問題」に取り組み続けました。
1773年に発表された論文
『Novae demonstrationes circa resolutionem numerorum in quadrata』
(「数を平方数に分解することについての新しい証明」)は、その集大成とも言える仕事です。
何が「新しい」のか
オイラーはすでに、
- すべての数は $a^2 + b^2 + c^2 + d^2$ の形で表せる
- 形が $4n+1$ の素数は $a^2 + b^2$ と表せる
といった重要な定理を証明していました。
それにもかかわらず、晩年になってこの論文を書いた理由は明確です。
証明を、より簡潔で、構造が見える形にしたかった
この論文は、新しい結論を出すというより、既に知られていた定理を、より深く理解し直す試みなのです。
積をとっても崩れない構造
論文の中心には、次の考え方があります。
もし二つの数が平方数の和として表せるなら、その積もまた平方数の和として表せる。
たとえば、
$$p = a^2 + b^2, \quad q = c^2 + d^2$$
と書けるとき、
$$pq = (ac – bd)^2 + (ad + bc)^2$$
と再び平方数の和になります。
この「形が保存される」性質を出発点に、オイラーは二平方・四平方の結果を一つの流れとして統一していきます。
「なぜ必ずできるのか」を説明する
この論文の特徴は、
- 計算結果を並べるのではなく
- 分解が 必ず成功する理由 を示す
点にあります。
どこで数が小さくなり、どこで同じ形が繰り返され、なぜ最終的に平方数の和に行き着くのか。
証明全体が、「手続き」として見えるように書かれています。
フェルマーからオイラーへ
フェルマーは、
すべての数は平方数の和になる
という大胆な主張を残しました。
オイラーはそれを、
- 個別の定理に分け
- 厳密に証明し
- さらに証明法そのものを洗練させた
のです。
この論文は、その最終段階に位置します。
数学史的な意味
この仕事は、単なる「別証明」ではありません。
- 数の分解を 操作として理解する視点
- 積と和の性質を 統一的に扱う方法
- 後の代数的整数論につながる発想
が、はっきりと姿を現しています。
数学が「結果の集まり」ではなく、考え方の体系であることを、この論文は静かに示しています。








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