「平方数の和」の証明を、もう一度 ――オイラー晩年の再挑戦(E445)

18世紀の数学者 レオンハルト・オイラー は、生涯にわたって「数を平方数の和として分解する問題」に取り組み続けました。

1773年に発表された論文

『Novae demonstrationes circa resolutionem numerorum in quadrata』

(「数を平方数に分解することについての新しい証明」)は、その集大成とも言える仕事です。

何が「新しい」のか

オイラーはすでに、

  • すべての数は $a^2 + b^2 + c^2 + d^2$ の形で表せる
  • 形が $4n+1$ の素数は $a^2 + b^2$ と表せる

といった重要な定理を証明していました。

それにもかかわらず、晩年になってこの論文を書いた理由は明確です。

証明を、より簡潔で、構造が見える形にしたかった

この論文は、新しい結論を出すというより、既に知られていた定理を、より深く理解し直す試みなのです。

積をとっても崩れない構造

論文の中心には、次の考え方があります。

もし二つの数が平方数の和として表せるなら、その積もまた平方数の和として表せる。

たとえば、

$$p = a^2 + b^2, \quad q = c^2 + d^2$$

と書けるとき、

$$pq = (ac – bd)^2 + (ad + bc)^2$$

と再び平方数の和になります。

この「形が保存される」性質を出発点に、オイラーは二平方・四平方の結果を一つの流れとして統一していきます。

「なぜ必ずできるのか」を説明する

この論文の特徴は、

  • 計算結果を並べるのではなく
  • 分解が 必ず成功する理由 を示す

点にあります。

どこで数が小さくなり、どこで同じ形が繰り返され、なぜ最終的に平方数の和に行き着くのか。

証明全体が、「手続き」として見えるように書かれています。

フェルマーからオイラーへ

フェルマーは、

すべての数は平方数の和になる

という大胆な主張を残しました。

オイラーはそれを、

  • 個別の定理に分け
  • 厳密に証明し
  • さらに証明法そのものを洗練させた

のです。

この論文は、その最終段階に位置します。

数学史的な意味

この仕事は、単なる「別証明」ではありません。

  • 数の分解を 操作として理解する視点
  • 積と和の性質を 統一的に扱う方法
  • 後の代数的整数論につながる発想

が、はっきりと姿を現しています。

数学が「結果の集まり」ではなく、考え方の体系であることを、この論文は静かに示しています。

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