18世紀最大の数学者の一人、レオンハルト・オイラー は、生涯にわたって「整数だけで方程式を解く」問題に取り組み続けました。
その最晩年、1783年に発表された論文が
『Nova subsidia pro resolutione formulae $ax^2 + 1 = y^2$』
(「$ax^2 + 1 = y^2$ という式を解くための新しい補助手段」)です。
扱われている問題は驚くほどシンプル
この論文で扱われているのは、たった一つの形の方程式です。
$$ax^2 + 1 = y^2$$
ここで $a$ は与えられた整数、問われるのは、
- この式を 整数解 $x, y$ が満たすことはあるのか
- あるとすれば、どのように見つければよいのか
という点です。
一見すると単純な式ですが、実は非常に多くの数論的構造が隠れています。
なぜこの式が重要なのか
この方程式は、
$$y^2 – ax^2 = 1$$
と書き直すことができ、平方数の差や二次形式の研究と深く結びついています。
オイラーはこの論文で、
- どのような $a$ に対して解が存在するか
- 一つの解から、次の解をどのように作るか
- 解が存在しない場合、なぜ存在しないのか
を、具体例と一般論を行き来しながら丁寧に分析しています。
「新しい補助手段」とは何か
タイトルにある Nova subsidia(新しい補助手段)とは、まったく新しい定理を意味するのではありません。
むしろ、
既に知られている方法を、より確実に・より体系的に使えるようにする工夫
を指しています。
論文中では、数表・具体計算・変形操作を組み合わせることで、解が存在する場合と存在しない場合を見分ける実践的な手続きが示されています。
これまでの研究とのつながり
この論文は、オイラー自身の長年の研究を集約したものです。
- 不定方程式を整数で解く方法
- 二次形式の構造
- 平方数の和の理論
が、この一つの式に凝縮されています。
個別の問題を解いて終わるのではなく、「なぜこの形の式は特別なのか」 を説明しようとする姿勢が、随所に見られます。
数学史的な位置づけ
この方程式は、後にラグランジュや19世紀の数学者たちによってさらに理論化されていきます。
しかし、
- 問題を徹底的に掘り下げ
- 具体例と一般構造を往復し
- 解法を「道具」として整える
という姿勢は、まさにオイラー的です。
この論文は、オイラーが生涯追い続けた「整数で考え抜く数学」の最終章 と位置づけることができます。









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