カルダノとフェラーリの公式の解説

16世紀のイタリアでは、数学者たちが高次方程式の解法を競い合っていました。その中で生まれたのが、3次方程式を解くカルダノの公式と4次方程式を解くフェラーリの公式です。これらの公式は方程式論の発展において重要な役割を果たしました。今回は、これらの歴史的な解法について詳しくご紹介します。

歴史的背景

16世紀のイタリアで、数学者たちが高次方程式の解法を競い合っていました。この時代の主要な数学者として以下の人物が活躍していました:

ジェロラモ・カルダノ(1501-1576): 3次方程式の解法を発見
ルドヴィコ・フェラーリ(1522-1565): カルダノの弟子で4次方程式の解法を発見
シピオーネ・デル・フェッロ(1465-1526): 3次方程式の特殊な形の解法を最初に発見

これらの数学者たちの競い合いから、現代でも使われている重要な解法が生まれました。

カルダノの公式(3次方程式の解法)

基本的な考え方

3次方程式 ax³ + bx² + cx + d = 0 を解く方法です。

ステップ1: 標準形への変換

まず、$x = y + α$ という置換を使って、$x^2$ の項を消去し、次の標準形にします:

$x^3 + px + q = 0$

ステップ2: カルダノの置換

$x = u + v$ と置いて、以下の連立方程式を作ります:
・$u^3 + v^3 + q = 0$
・$3uv + p = 0$(つまり $uv = -\frac{p}{3}$)

ステップ3: 解の公式

この連立方程式を解くと:

$u^3 = \frac{-q + \sqrt{q^2 + \frac{4p^3}{27}}}{2}$
$v^3 = \frac{-q – \sqrt{q^2 + \frac{4p^3}{27}}}{2}$

したがって:

$x = \sqrt[3]{\frac{-q + \sqrt{q^2 + \frac{4p^3}{27}}}{2}} + \sqrt[3]{\frac{-q – \sqrt{q^2 + \frac{4p^3}{27}}}{2}}$

これがカルダノの公式の基本形です。

3つの解を求める方法

3次方程式には3つの解があります。複素数の1の3乗根 $\omega = \frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$ を使って:

$x_k = \omega^k \sqrt[3]{\frac{-q + \sqrt{q^2 + \frac{4p^3}{27}}}{2}} + \omega^{3-k} \sqrt[3]{\frac{-q – \sqrt{q^2 + \frac{4p^3}{27}}}{2}}$

ここで $k = 0, 1, 2$ とします。この方法により、3次方程式のすべての解を求めることができます。

フェラーリの公式(4次方程式の解法)

基本的な考え方

4次方程式 $x^4 + px^2 + qx + r = 0$ を解く方法です。

ステップ1: 完全平方式を作る

$x^4 + px^2$ に $t^2 + 2tx^2$ を加えて:

$(x^2 + t)^2 = (2t – p)x^2 – qx + (t^2 – r)$

ステップ2: 右辺を完全平方式にする

右辺が完全平方式になるように $t$ を選びます。判別式が0になる条件から:

$8t^3 – 4pt^2 – 8rt + 4pr – q^2 = 0$

これは3次方程式なので、カルダノの公式で解けます!

ステップ3: 2次方程式に帰着

$t$ が決まると、元の4次方程式は2つの2次方程式に分解できます:

$(x^2 + u) = \pm\sqrt{2u – p}\left(x – \frac{q}{2(2u – p)}\right)$

これで4つの解が求められます。

まとめ

カルダノの公式とフェラーリの公式は、方程式論の発展において重要な役割を果たしました:

カルダノの公式: 3次方程式を巧妙な置換で解く
フェラーリの公式: 4次方程式をカルダノの公式を使って3次方程式に帰着させる

これらの公式により、4次までの方程式はすべて代数的に解けることが示されました。しかし、5次以上の方程式については、一般的な解の公式が存在しないことが後にアーベル-ガロア理論によって証明されています。

注意: 実際の計算では複雑になることが多いため、現代では数値解法やコンピューターを使うことが一般的です。これらの公式は、方程式論の理論的基礎として重要な意味を持っています。

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