18世紀の数学者 レオンハルト・オイラー は、フェルマーが残した数論の直感的主張を、体系的な理論へと作り替えた人物です。
1760年に発表された論文
『Demonstratio theorematis Fermatiani omnem numerum sive integrum sive fractum esse summam quatuor pauciorumve quadratorum』
(「すべての数は、整数であっても分数であっても、四つ以下の平方数の和として表されるというフェルマーの定理の証明」)は、その到達点にあたります。
フェルマーの大胆な主張
フェルマーは次のような主張をしていました。
任意の数は、$a^2 + b^2 + c^2 + d^2$ の形で表せる。
ここで重要なのは、「四つ以下」という点です。場合によっては、
- 1つ
- 2つ
- 3つ
の平方数の和で済むこともあります。
たとえば $7 = 4 + 1 + 1 + 1$、$15 = 9 + 4 + 1 + 1$ といった具合です。
しかしフェルマーは、この主張の証明を残しませんでした。
オイラーの課題:「すべて」をどう扱うか
この主張の難しさは、「多くの例」ではなく、
どんな数であっても成り立つ
ことを示さなければならない点にあります。
オイラーはこの論文で、
- 整数だけでなく 分数 も含めて
- どの数も必ず平方数の和に分解できること
- しかも平方数の個数が 高々4個で足りる こと
を、段階的に示していきます。
これまでの論文との関係
この論文は、オイラー自身の先行研究を土台にしています。
- 「二つの平方数の和として表される数」
- 「$4n+1$ 型の素数は平方数の和になる」
といった結果を積み重ねたうえで、
最終的に、すべての数が平方数の和になる
という、より大きな結論へと到達しています。
個別の性質を丹念に積み上げて、全体を覆う定理に仕上げていく――まさにオイラーらしい仕事です。
なぜ「4つ」で十分なのか
論文では、
- 平方数を割り算で調べる方法
- 余り(剰余)の性質
- 小さい平方数の組み合わせ
を用いて、「これ以上平方数が必要になることはない」ことを示していきます。
重要なのは、「4つあれば必ず足りる」のであって、常に4つ必要なわけではない、という点です。
数学史的な意味
この結果は、現在では ラグランジュの四平方定理 として知られていますが、その完成に至る道筋を実際に切り開いたのがオイラーでした。
この論文は、
- フェルマーの直感
- オイラーの検証と整理
- 後の数論への橋渡し
を一つにつなぐ、決定的な位置を占めています。
数学は「全部」を扱えるか
この論文が示しているのは、単なる計算結果ではありません。
数学は、「たいてい成り立つ」ではなく「必ず成り立つ」を扱う学問である
という、数学の基本姿勢そのものです。







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