素数は、数学の基本的な存在でありながら、数が大きくなるにつれて、その判定は急激に難しくなります。
では、何十万、何百万という大きな数が素数かどうかを、18世紀の数学者たちはどのように調べていたのでしょうか。
1769年、レオンハルト・オイラー は、この問題に真正面から取り組んだ論文を発表しました。
『Quomodo numeri praemagni sint explorandi, utrum sint primi necne』
(「非常に大きな数が素数であるかどうかを調べる方法について」)です。
理論だけでは足りない
オイラーはこの論文で、まず率直に次の事実を認めます。
数が大きくなると、単純な割り算による素数判定は、現実的ではなくなる。
そこで彼が目指したのは、
- すべてを調べ尽くす方法ではなく
- 調べなくてよい候補を、体系的に除外する方法
でした。
数の「形」に注目する
論文の中心となる発想は、非常にオイラーらしいものです。
オイラーは、大きな数 $N$ を
$$N = 4n \pm 1, \quad 6n \pm 1$$
といった特定の形に分類し、その形ごとに、
- どのような場合に合成数になるか
- どのような場合には、素数の可能性が残るか
を整理していきます。
こうして、最初から素数になりえない数を大量にふるい落とすことが可能になります。
計算の痕跡が残る論文
この論文の大きな特徴は、実際の計算過程が大量に掲載されている点です。
本文中には、
- 巨大な数を平方数と比較する計算
- 具体的な割り算の手順
- 実際に合成数であることが確認された例
が、表のような形で並んでいます。
これは、単なる理論論文ではなく、
「どう計算したか」を後世に伝えるための記録
でもあるのです。
なぜここまで丁寧なのか
オイラーにとって、素数判定は単なる計算問題ではありませんでした。
- フェルマー数
- 数の分解理論
- 不定方程式の解の存在
といった多くの研究で、「ある数が素数かどうか」は決定的な役割を果たします。
そのため、信頼できる判定手順そのものを整備する必要があったのです。
数学史的な意義
この論文は、
- 純粋理論と計算実践の結びつき
- 18世紀における「計算可能性」の感覚
- 素数研究が、机上だけでなく手計算によって支えられていた事実
をはっきりと示しています。
現代のコンピュータによる素数判定とは対照的に、人間の手でどこまでできるかを極限まで追求した仕事だと言えるでしょう。








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