現在数学で最も難しいと言われているのが「ABC予想」です。
2020年4月3日、とある論文が「ABC予想」を証明したとして国際数学専門誌「PRIMS」に掲載されることが決まりました。
論文は京都大学の望月新一(もちづき しんいち)教授が書いたもので、全部で600ページを超えます。
実は論文を公表したのは2012年、今から8年前です。
公表から掲載までなぜそんなに時間がかかったのでしょうか?
理由は「ABC予想」自体の難しさと論文内の理論の新しさです。
数学界に激震が走った出来事をできる限り分かりやすく説明します。
「ABC予想」とは
そもそも「ABC予想」とは何なのでしょうか?
ジョゼフ・オスターリ(オステルレ)博士とデイヴィッド・マッサー教授が1985年に提起した予想です。
二人の名前から取って、別名「オスターリ・マッサー予想」とも呼ばれています。
数学業界では、証明はできていないが定理として成り立つと思われる主張を「予想」と言います。
「ABC予想」を簡単に説明すると「足し算と掛け算の関係」です。
「足し算と掛け算なんて小学生でもできるじゃないか!」
そう思うかもしれませんが、実は大きな秘密が隠されています。
「整数A・Bを足してCを作った時、CにはAにもBにも含まれない素因数はいくつかしか無い」ということです。
具体的には以下のようになりますが、サラッと流し読みで構いません。
- a+b=cを満たす素な自然数の組(a,b,c)に対し、d=rad(abc)とする。
- このとき、ε>0に対して、 c > d1+εを満たす組(a,b,c)は、たかだか有限個しか存在しないであろう。
この「ABC予想」が正しければ成り立つとされる予想(スピロ予想やフライ予想・ボイタ予想など)が数多くあります。
あの証明に350年を要した「フェルマーの最終定理」さえも「ABC予想」によって数行で証明できると言われています。
「ABC予想」の証明が完成すれば数学界を揺るがすのです。
「ABC予想」の証明
「ABC予想」は過去に何人もの世界の数学者達が挑戦しましたが、手も足も出ない状態でした。
しかし2012年8月30日、「ABC予想」を証明したとする論文がインターネット上で発表されました。
発表したのは京都大学数理解析研究所の望月新一(もちづき しんいち)教授です。
望月教授は16歳でプリンストン大学へ進学し、19歳で学士課程を卒業、23歳で博士課程を修了しPh.D.を取得した天才です。
自身のホームページに論文を発表したのは2012年8月でした。
「宇宙際タイヒミューラー理論(IUT理論)」 と称し、「ABC予想」の証明も含まれていました。
その内容は望月教授が約20年研究してきた結果であり、四部で構成され、600ページを超えていました。
まったくの新しい思考回路のため、「未来(異世界)から来た論文」と呼ばれた程です。
望月教授の「ABC予想」の証明は世界を驚かせました。
「ABC予想」証明の査読8年
通常、論文が投稿されると出典や論理などの細かいチェック(査読)が入り、問題なければ「ジャーナル」などの学術誌などに掲載されます。
しかし望月教授の論文は新しい用語や定義がなされており、他の数学者が読み解こうとしても理解できませんでした。
世界の数学者たちに何度も講義を行ない、時間をかけて査読が行われました。
「宇宙際タイヒミューラー理論(IUT理論)」 発表から約8年後の2020年4月3日。
ようやく望月教授の論文が正しいと結論付けられ、国際数学専門誌「PRIMS」の特別号に掲載されることが決定しました。
「ABC予想」証明でフィールズ賞?
フィールズ賞は数学におけるノーベル賞とも言うべき国際的な賞です。
4年ごとに数学のために著しい貢献をした2人以上4人以下が選ばれます。
今回、「宇宙際タイヒミューラー理論(IUT理論)」発表・「ABC予想」証明という輝かしい成績を残した望月教授なら、フィールズ賞受賞者候補になるのではないでしょうか。
しかし残念ながら望月教授は対象外です。
受賞者は数学の将来を担う人物を表彰するという目的のため、年齢は原則として40歳までとされています。
望月教授は1969年生まれ、論文発表時は43歳、2020年現在51歳です。
日本人の受賞者として、小平邦彦(1954年)・広中平祐(1970年)・森重文(1990年)の3人に並ぶことは今の所無いようです。
例えフィールズ賞獲得とならずも、「宇宙際タイヒミューラー理論(IUT理論)」発表・「ABC予想」証明によって世界を驚かせたことは事実です。
望月教授の名は数学界に深く刻まれることでしょう。
まとめ
「ABC予想」は「足し算と掛け算の関係」について触れたもので一見簡単なのようで、とても難解です。
誰もが証明することができないと諦めていた中、独自の論理で「ABC予想」証明にこぎつけたのが京都大学の望月新一(もちづき しんいち)教授です。
2012年に「宇宙際タイヒミューラー理論(IUT理論)」 そして「ABC予想」証明を発表しました。
その内容は他の数学者の理解を超えていたため、「正しい」と判断するまでに8年という時間を要しました。
今後は「ABC予想」から「ABC定理」となり、さらに発展されていくはずです。
望月教授のおかげで数学の世界が大きく広がったと言えるでしょう。
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