数学界で360年解決できなかった、超難問「フェルマーの最終定理」。
「フェルマーの最終定理」には多くの数学者が挑みましたが、完全な証明にはなりませんでした。
しかし、1995年にアンドリュー・ワイルズ氏が「フェルマーの最終定理」の謎を解きます。
経緯を調べてみると、「フェルマーの最終定理」の証明は複数人の天才達が関わっており、長い年月を通して協力体制にあったことが分かりました。
今回は人類に課された問題「フェルマーの最終定理」への挑戦をひとつずつ見ていきましょう。
「フェルマーの最終定理」とは
「フェルマーの最終定理(Fermat’s Last Theorem)」は数学者ピエール・ド・フェルマーが残した難問です。
「私はこの命題について、真に驚くべき証明を見出したが、それを記すにはここはあまりに余白が足りない」といったメモを置いて、この世を去ったのです。
具体的には、
nが3以上の自然数であれば、xn + yn = zn
上記の式を満たす自然数の組 (x, y, z)は存在しない
というものです。
フェルマーの死後300年以上の間に多くの数学者がこの命題を解こうとして挑戦しましたが、結局解決には至りませんでした。
20世紀後半、コンピューターが発達したにも関わらずです。
結局、「フェルマーの最終定理」を解決したとアンドリュー・ワイルズ氏が報告しました。
それは1993年6月、世界が驚きに溢れました。
その後「ワイルズの定理」や「フェルマー・ワイルズの定理」とも呼ばれるようになりました。
「谷山-志村予想」が世に出る
アンドリュー・ワイルズ氏の「フェルマーの最終定理」解決に影響を与えたのが「谷山-志村予想」です。
1955年9月に日光の国際シンポジウムにて、日本人数学者・谷山豊(たにやま ゆたか)氏が衝撃的な予想を発表しました。
それに志村五郎(しむら ごろう)氏も加わり、「谷山-志村予想」として知られます。
「谷山-志村予想」を数学界に持ち込んだのがアンドレ・ヴェイユ氏だったため、彼の名前を含めて「志村-谷山-ヴェイユ予想」・「谷山-ヴェイユ予想」とも呼ばれます。
「谷山-志村予想」は「すべての有理数体上に定義された楕円曲線はモジュラーである」という主張です。
当時の数学者は「谷山-志村予想」が正しいと感じ、論文にも「谷山-志村予想が正しければ」といった文言が見え始めます。
ただ、証明はできずにいた1958年11月17日、31歳という若さで谷山豊氏が自殺してしまいます。
残った志村五郎氏が中心となって、「谷山-志村予想」を世に広める活動を行ないます。
「フェルマーの最終定理」への架け橋
ドイツの数学者ゲルハルト・フライ氏は「谷山-志村予想」に穴がないか調べていました。
1980年代には、「谷山-志村予想」を証明することは「フェルマーの最終定理」の証明にもつながると気付きます。
簡単に言えば、「谷山-志村予想」が正しければ「フェルマーの最終定理」も正しいことになります。
そしてジャン・ピエール・セール氏が定式化したことで「フライ・セール予想」と呼ばれ、その後1986年に「フライ・セール予想」はケン・リベット氏によって証明されます。
「フェルマーの最終定理」への証明に一歩近づいたのです。
しかし、まだ「谷山-志村予想」の証明は絶望的、すなわち「フェルマーの最終定理」の証明がされるのも遙か先だろうという雰囲気が数学界に流れました。
挑戦者アンドリュー・ワイルズ氏
数学者が「フェルマーの最終定理」へまともに向き合おうとしなかったその頃。
10歳の少年が「フェルマーの最終定理」に出会い、強い憧れを持ち、そのまま数学の世界に歩みます。
少年の名前はアンドリュー・ワイルズ。
専門分野として楕円曲線を選んでいましたが、ケン・リベット氏の証明のニュースを耳にします。
その後「谷山-志村予想」の証明に没頭し、最終的には「フェルマーの最終定理」の証明を行ないました。
1993年には「フェルマーの最終定理」を証明したと宣言したもののまだ完璧ではなく、「岩澤理論」と呼ばれるものを補強として使いました。
その後約2年かけて証明を完成させ、1995年にAnnals of Mathematicsに掲載されました。
まとめ
「フェルマーの最終定理」は300年以上、さまざまな数学者を魅了してきました。
一人ひとりが提唱した理論では完全な証明にはなりませんでしたが、着実に答えに近づいていました。
谷山豊(たにやま ゆたか)氏と志村五郎(しむら ごろう)氏の「谷山-志村予想」、ゲルハルト・フライ氏とジャン・ピエール・セール氏の「フライ・セール予想」、そしてケン・リベット氏からアンドリュー・ワイルズ氏へと橋渡しされます。
1995年に「フェルマーの最終定理」の証明が正しいと認めさせたアンドリュー・ワイルズ氏の功績はもちろん素晴らしいものです。
しかし、その影には世界中の数学者がヒントを出し合ってきたということを忘れてはいけません。
国を越えて、時代を越えて、人類最大の謎を解き明かしたのです。
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