日本で最初の暦(カレンダー)を作った人の名前を知っているでしょうか?
その名は渋川春海(しぶかわ はるみ/しゅんかい)。
渋川春海の暦づくりをテーマにした小説・映画『天地明察』が人気を博したので、聞いたことがあるかもしれません。
渋川春海は囲碁棋士でありながら、天文学者という優れた頭脳の持ち主でした。
江戸幕府に依頼されて、日本独自の暦「貞享暦法(じょうきょうれきほう)」を作りあげます。
しかし同時期、暦づくりに熱中していたのは渋川春海だけではありません。
今回は江戸時代の暦づくりや数学との関わりについて紹介します。
テーマは暦つくり『天地明察』
2009(平成21)年、冲方丁(うぶかたとう)著の小説『天地明察』が刊行されました。
天文学者・囲碁棋士である渋川春海(しぶかわ はるみ/しゅんかい)の生涯がドラマチックに描かれています。
暦を題材にした小説としては異例の売れ行きで、第31回吉川英治文学新人賞や第7回本屋大賞などを受賞しました。
『天地明察』は天文学・数学をフランクに楽しみたい人におすすめの作品です。
『天地明察』あらすじ
舞台は江戸時代前期。
中国の宣明暦(せんみょうれき)を800年以上使用し続けた日本では、暦に誤差(ズレ)が生じていた。
碁打ちの安井算哲(のちの渋川春海)は数学オタクでもあり、数学の設問を解くのが得意。
ある日、同じように数学に深い興味を持つ関孝和(せき たかかず・こうわ)の名を知る。
関孝和と接触しようと考える安井算哲。
しかし、安井算哲は幕府から独自の算術や天文学者としての才能を認められ、北極出地つまり北極星を観測し、土地の緯度を計測するよう命じられる。
かくして日本独自の暦づくりが始まるー。
『天地明察』映画化
『天地明察』はその人気ぶりから2012年には映画化されました。
主役の渋川春海(しぶかわ はるみ/しゅんかい)を演じたのはV6の岡田准一さんです。
他キャストも実力派俳優が勢揃い。
- 宮崎あおいさん
- 佐藤隆太さん
- 市川猿之助さん
- 横山裕さん
歴史ネタでありながら、オープニング2日間で動員11万6431人と注目を浴びました。
『天地明察』をきっかけに天文学・数学に関心を抱いた人もいたのではないでしょうか。
渋川春海のライバル・関孝和
『天地明察』のあらすじで説明した通り、渋川春海(しぶかわ はるみ/しゅんかい)にはライバルがいました。
関孝和(せき たかかず・こうわ)、和算という日本独自の数学を修めた天才数学者です。
関孝和は数学だけでなく、暦学・天文学・測量学にも興味を持っていました。
そして関孝和も渋川春海と同様に幕府から暦づくりを依頼されたため、中国の「授時暦」を参考に取り組み始めます。
二人の暦のつくり方は異なりました。
渋川春海は中国の暦と照らし合わせていくスタイルで、関孝和は理論を理解してから暦を編みだすスタイルでした。
関孝和の徹底ぶりはすさまじく、しかしその分非常に時間がかかる方法でした。
そのため、先に渋川春海が「貞享暦法(じょうきょうれきほう)」を完成させてしまいました。
さらに幕府とのコネも強かったため、「貞享暦法(じょうきょうれきほう)」が導入されます。
ライバル・関孝和は負けてしまい、暦づくりを断念しました。
今なお使われる「発微算法」
残念ながら関孝和(せき たかかず・こうわ)の暦は導入されませんでしたが、その代わり、数学界に爪痕を残しました。
ひとつが「発微算法(はつびさんぽう)」です。
名前を聞いてもピンと来ないかもしれませんが、簡単に言うと一次方程式のことです。
具体的な例を挙げましょう。
- x+9=0
- 2x-8=6
- 3x=15
中学校の数学でよく見るこの形を作り上げたのは、もとをたどれば関孝和なのです。
円周率の近似値
関孝和(せき たかかず・こうわ)は円周率を計算し、小数第11位までの近似値を出したとも言われています。
今でこそ小数約31兆4000億桁まで計算できていますが、当時は近似値を出すのはとても大変でした。
江戸時代の数学書「塵劫記(じんこうき)」でも3.16と設定されていました。
しかし、関孝和は正131072角形を用いて小数第11位までの近似値を計算したのです。
さらに微分積分に近いものまで使いこなしたとの噂もあります。
そのため、当時の数学者の間では、松尾芭蕉(俳聖)や茶道の千利休(茶聖)に倣って「算聖」と呼ばれるほど崇められていました。
日本の数学界を引き上げたのは、関孝和のお陰と言っても過言ではないでしょう。
まとめ
暦(カレンダー)の作成には天文学や数学などの豊富な知識が欠かせません。
江戸時代、日本独自の暦づくりを担当したのは二人、渋川春海(しぶかわ はるみ/しゅんかい)と関孝和(せき たかかず・こうわ)でした。
どちらも頭脳明晰、数学に長けた人物でした。
結局採用されたのは渋川春海が作りあげた「貞享暦法(じょうきょうれきほう)」でしたが、関孝和の功績も忘れてはいけません。
「発微算法(はつびさんぽう)」や円周率の近似値など、独自の考え方で数学の世界を変えていきました。
そして現在も強く影響が残っています。
江戸時代の暦づくり・数学に興味を持ったなら、小説・映画『天地明察』をチェックしてみてください。
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